よく使われる心理療法

ここでは、カウンセリング場面で比較的よく使用されている心理療法をいくつか取り上げてご紹介しております。心理療法に初めて触れる方にもなるべく分かりやすいようにかなり端折った部分もございます。より詳しくお知りになりたい方は良質な専門書籍が多く発行されていますので、是非そちらをお読みになられることをお勧めいたします。

来談者中心療法

来談者中心療法は、人間はみな自分の中に潜在している可能性を最大限に開発し実現して生きる性質(本能)を持っているという理論を基盤として考案された心理療法です。つまり、人間には ”よくなろうとする力” が生まれつき備わっているということです。ところが、たくさんの悩みやストレスによって心が弱るとこの力も一緒に弱ってしまうのです。あと、来談者中心療法は「非指示的療法」と言われている名の通り、カウンセラーがあれこれと指示をすることはありません(もちろん例外もありますが‥)。ただただ、ゆっくり、じっくり、しっかりお話を聴きます。クライエントは「カウンセラーに自分の話をしっかり理解してもらえている」と実感できることで、自己の問題を見つめなおし、ありのままの自分を受け入れ尊重することができるようになります。心が癒され自分自身を受容できたとき、不思議と本来の ”よくなろうとする力” が湧き上がってくるのです。


【補足】カウンセリングルームに訪れる方は、心が弱って身動きが取れない状態に陥ってしまっていることがほとんどです。眠れない、食欲がない、イライラする、考えがまとまらない、やる気が起こらない、これまで楽しかったことが楽しく思えない、わけもなく涙が出る、誰も自分のことをわかってくれない、生きている意味がないと感じる…などの症状は心が弱っている明らかなサインです。来談者中心療法は、このように心が弱ってしまった方には特に効果的だと言われています。

認知療法

認知療法は、物事の捉え方(考え方・感じ方)の歪みが結果的に嫌な気分(怒り、悲しみ、混乱、抑うつ)を生じさせるという理論を基に作られた心理療法です。例えば、楽しい一週間の休みが半分終わった時点で、”あ~、もう半分終わってしまった…”と考えるか、”あ、まだあと半分も残っている”と考えるかの違いです。別の例として、物事に対して”~ねばならない(must)”と考えるか、あるいは、”~であるに越したことはない(better to)”と考えるか、これらの捉え方次第で気分が大きく異なってくることから、これを適切なものに変えていこうというのがこの療法のねらいです。

【補足】この考えは一見もっともで非常に簡単なようですが、実際は”分かってはいるけれどそれ(捉え方を変える)ができないから悩んでいるんだ!”と誰もが言いたいところでしょう。事実、この療法を単独で使った場合の効果については多くの批判があります。ただ次に述べる「行動療法」と組み合わせた『認知行動療法』の誕生によって多くの症例に対して高い効果を表すようになります。

行動療法

行動療法の創始者は、不適応行動の原因は適切な行動の学習の欠如、あるいは不適切な行動の学習結果であると考えました。そこで精神面は横に置いておいて、「行動の変容」(望ましくない行動をなくし、望ましい行動を増やす)のみに焦点を当てて考案されたのが行動療法です。行動療法といってもその中にはさらに多くの技法が存在しますが、実は、日常当り前のようにとっている行動もこれらの技法を無意識に使っていたりするのです。たとえば、子供のしつけですが、良いことをするとシールやお菓子を与えてそのよい行動を強化しようとします。逆に悪いことをした時は、お気に入りのおもちゃを取り上げたり自分の部屋でひとりで反省させるなど子どもにとって好ましくないことをしてその悪い行動を失くそうとします。

【補足】行動そのものに注目した行動療法には ”内面的葛藤などの精神面を重視していないため、特定の行動を除去しても代わりに別の症状が出てくる”という批判があります。子供のしつけも ”なぜその行動が悪いのか” という説明や ”どうしてその(悪い)行動をとってしまったのか” など子どもの内面にアプローチする必要がありますよね?そこで先に挙げました、捉え方や感情に焦点を当てた「認知療法」と、行動の変容を目的とした「行動療法」を組み合わせた『認知行動療法』が誕生します。そしてこの『認知行動療法』は非常に多くの症例に対して高い効果を表します。

認知行動療法

認知行動療法は、その名の通り「認知」と「行動」の両者に焦点を当て、誤った認識または陥りがちな思考パターンの癖をよりよい方向へと修正しながら、避けたがっている問題と向き合い克服することで精神的・身体的苦痛を改善させる心理療法です。
【補足】この療法は、軽度のうつ、パニック障害、強迫神経症、PTSD、対人恐怖症など多種多様な精神疾患に大変効果的であるといわれています。

精神分析療法

精神分析療法は、精神疾患の真の原因は「無意識」の中にあると考えます。クライエントにはリラックスした環境の中でこころに次々と浮かぶことを自由に話してもらい(自由連想法)、治療者(分析者)はその一連の想像の連鎖から無意識の中に潜む問題の真の原因(トラウマ・傷)を推測・分析し、その原因に治療的アプローチをすることで精神症状の改善を目ざします。

【補足】この療法は、普段無意識のうちに抑圧している(思い出したくない)事柄にあえて焦点を当てるため、クライエントにとても大きな心理的負担がかかる可能性があるといえます。したがって、そういったクライエントの些細な心理的変化に気を配りながら、経験豊富な分析者のもとで極めて慎重に行われるべき療法です。

森田療法

森田療法では、「神経症」は、完璧主義で執着心の強い人が不安や緊張に必要以上にとらわれてしまい「自分はおかしいのではないか」「これではいけない。どうにかしなくては」と葛藤を繰り返した結果引き起こされてしまった症状であって病気でないと考えます。このような 心のとらわれ” に焦点を当てず、目的本位な行動を促していくことで症状を消失させることを試みます。

【補足】この療法は、神経質性格を持ち、かつ今の症状をどうしても治したいという強い意欲を持っている人には非常に効果があるといわれています。逆に、これらの条件が揃わない場合は効果があまり期待出来ないともいわれています。

内観療法

内観療法には、研修所などに1週間宿泊して研修する「集中内観」と日常生活で行うことができる「日常内観」があります。いずれにしても、誕生から現在までの自分の歴史をふりかえり自己を見つめなおすことで、ありのままの自己像や他者像に近づき自他を受容できるようになるといわれています。そしてその結果、さまざまな精神症状が軽減したり問題行動が減少すると考えられています。

【補足】この療法も他の心理療法と同様、本人に自発的な意欲がない場合は効果があまり期待できない言われています。そうかといって、強い精神力や体力が必要ということではなく、「自分を改善したい」とか「向上したい」という意欲さえあれば、老若男女問わず誰にでも効果が期待できる療法です。

家族療法

家族療法では、家族は互いに影響を与えあって成り立っていることから各個人を別々にとりあげるのではなく、家族全体をひとつのシステムとして捉えます。そして、その中で起こっている悪循環を見直し、良い方向へと変容させることで問題解決を目指します。

【補足】たとえば、不登校や家庭内暴力などの問題行動は、実はその問題を表現している本人(子供)の問題ではなく、何らかの家族内の不和(悪循環)が原因となっていることが少なくありません。したがって、家族療法は家族全員の協力なしに高い成果を上げることは非常に困難です。

自律訓練法

自律訓練法は、「自己催眠法」とも呼ばれている通り自分でできるリラクゼーション法です。「背景公式+6公式+消去動作」を一連の流れとし、それを繰り返し行なうことで自己催眠状態を作り出します。自律訓練法によって自律神経のバランスを整え過度の緊張をとることで、疲労回復、ストレス緩和、仕事や勉強の能率向上、抑うつや不安の軽減などに効果があるといわれています。

【補足】心臓、呼吸器、消化器、脳などに疾患のある場合には、症状悪化などの危険を伴うことがありますので、注意が必要です。不安な方は専門家のアドバイスの下で実施されることをお勧めいたします。

YSメソッド                    断然おすすめ!!

YSメソッドの開発者、佐藤康行(YS)は、人間のこころは「記憶」で出来ていると言います。記憶と言ってもこの世に生まれた現生の記憶だけではなく、先祖や前世から受け継いだとてつもなく膨大な「記憶」を何一つ忘れていないと考えています。その「記憶」に私たちは日々喜んだり苦しめられたりしているのです。例えば、「過去の辛かった出来事が忘れられない..」という問題も実際はその過去の出来事が存在しているわけではなく、その時に感じた”感情の記憶”が心にずっと留まっているだけなのです。そもそも心(記憶)の問題を薬や電気、手術などで解決することに矛盾を感じた佐藤は、記憶は記憶で塗り替えることができることを発見し、さらにそれを頭での理解(教え)ではなく、実際に体感・体得させる方法を開発しました。その手法は過去30年間で15万人以上のこころの問題を抱えた方々を劇的に救い、人生を好転させ続けています。

【補足】YSメソッドはどんな問題にも適応可能なところが最大のメリットです。副作用などもありませんが、心の深い部分にアプローチしていくため多少の体の不調(頭痛・めまい・吐き気など)を感じたり、途中でやめたくなったりといった好転反応が現れることもありますが、いずれも一過性のものなので心配はいりません。

 

★ 追記 ★

ここに記載したもの以外にも世の中にはまだまだ多くの心理療法が存在します。カウンセラーの得意・不得意、または「好み」もあります。

私自身の見解としては、クライエントの問題を解決するために全力でサポートするのがカウンセラーの役目であり、心理療法はあくまでもそのための「道具」であると考えます。したがって、得意だからといってある手法を始終単独で用いるのではなく、カウンセリングを進めていく中でカウンセラーが必要に応じて適切なものを見極めて随時取り入れながらクライエントを最善の道へと導いてゆくことがもっとも重要であると考えています。